2010/09/27 09:30  サンド島基地 司令室


「サンド等沿岸に、国籍不明の不審船が接近している。」

日の光をブラインドで遮断しようもかすかに差し込む光は電気をすべて消している部屋では目が痛くなるほど眩しい。
クーラーがない部屋ではブラインドの隙間から流れ込む風だけが救いだった。

「この船舶から無人偵察機とみられる物が噴出された。偵察活動を行うものだろう。」

スライドの説明をするハミルトンの声は淡々としていた。
しかしその表情は硬い。

「君たちの任務はこの無人偵察機を回収される前に補足、破壊してもらい、偵察活動阻止することだ。」
「船舶はどうする?」

バートレットは壁に寄りかかったままハミルトンに聞く。

「船舶への攻撃は許可あるまで禁止だ。くれぐれも、気をつけてくれよ…。バートレット大尉。」

その言葉に棘があることにティルたちは感じた。
前回の任務の影響だろう。
しかし、あれは止む負えないのではないかとティルは考える。

「すぐに任務開始だ。…健闘を祈る。」



「ブービー、ロックンローラー。」

バートレットの呼び声にティルとチョッパーは渋々と足を止めた。
手には前回と同じように2本の紙。
二人は前回と同じように同時にそれを引いた。









2010/09/27 10:30  サンド島沿岸


≪ 情報収集船に戻る無人偵察機あり。回収させるな、空中で撃ち落とせ。 ≫

『聞いたな、野郎ども。』
『エッジ、了解。』
『チョッパー了解。』
「ブレイズ了解」

すでに彼らの目には小さいながらも船と無人偵察機をとらえている。

『船には発砲するなとのことだ。いいな。』

無人偵察機の姿が彼らの目にはっきりと飛び込んできた。
ティルは操縦桿を握りなおす。

『ブービー!おまえの手並み、拝見させてもらうぞ!』
「…了解。」

メーターをチェックし、スロットルを倒して、加速させる。
すぐさま機銃のロックを外し敵機の尻につく。
射程距離に侵入。
機銃を放った。

爆発音とともに炎を吐いて海にのみこまれるのを確認する。

『ブービー、どうだ。この位なら楽勝だろ。』
「欠伸が出ます。」

ティルがそう吐き捨てるとバートレットは盛大に笑った。

『ははっ、だったらさっさと片付けちまおう。』

バートレットは操縦桿を引いて高度を上げる。
広く見渡せる高度までとるとそこで上昇をやめた。

『俺が警戒する。お前たちは玩具で遊んできな。』

偵察機の破壊は何とも味気ないものだとティルは思った。
ドッグファイトでもない。
いとも簡単に背後に回り込めるし、機銃もいとも簡単に当たる。

『人が乗っていないことが救いだな。』

チョッパーが漏らした科白にティルは同意する。

「気楽に落とせるからな。」

だが、やはり味気なかった。



あっという間に無人機は海の藻屑となっていった。
最後の一機はナガセが堕とす。

そのとき、サンダーヘッドが叫んだ。

≪警告!国籍不明機が多数接近!方位280、こないだと同じ方向だ!!≫

『向こうはどれだけの数揃えてんだ?こっちはたったの4機っきりだぜ』

バートレットはうんざりといった風に言った。

『そら、退避しろ。こっちだ。』

バートレットは機体を翻した。
ナガセ、ティル、チョッパーもそれに続く。

『俺についてこれるか?』
「親鳥は見失いません」

ティルの返答にバートレットは満足そうに笑う。

『ちくしょう…っ追いつかれる!』

一足遅れているチョッパーが苦しげに叫ぶ。
バートレットは彼を確認した。敵機はすぐ傍まで来ている。

『今日のどん尻はお前か、ロックンローラー。待ってろ、助けてやる。』

バートレットはスロットルを引く。

『お前らも見てねぇで降りかかる火の粉を払え。』

≪バートレット大尉!!!≫

サンダーヘッドが叫ぶ。

それと同時に敵機が機銃を放った。

『攻撃確認。反撃します。』

ナガセの冷たい声が無線に届く。

『エッジ、交戦。』
『ハートブレイク・ワン、交戦。』
『チョッパー、交戦!!』
『ブレイズ、交戦!』

≪ウォードッグ!!交戦許可はまだ出していない!!≫

サンダーヘッドが叫ぶ声ももはや意味がなかった。

『ブービー、全部落とすぞ。』
「了解、隊長。」

ティルは機体を旋回させた。
最初に視界に入った敵機を狙う。
素早く敵機の尻に噛みつき、ミサイルを放った。
ドォンという爆発音とともに炎をあげ落ちていった。

≪交戦許可なしで撃墜など…何を考えているんだウォードック!!≫

『国籍は…やはり分からない。』

ナガセは敵機の機体を見やる。
しかし、国の情報となるペイントが敵機の機体にはなかった。

『奴さんはよっぽど俺たちのことが知りたいらしいな…。』
『チョッパー見物料いただいてこい。』

軽口をたたくチョッパーにバートレットはそれ以上の軽口でこたえる。
それでもなお敵機の尻に噛みつき、ミサイルを放つ彼にティルは感心した。

『うわぉ!!』
「どうした!!?」

チョッパーの叫びにティルは彼の機体を探す。
3時方向にチョッパーの機体を見つけた、後方には敵機が。

『くっそ、ブービー、助けろ!!』
『ブービーロック野郎を助けてやれ。』
「了解!!」

直ちにティルは機体を旋回させた。
そのまま上昇させ、敵機の真上に飛ぶ。
操縦桿を下げ、落ちるように敵機との距離を縮める。

「(まだだ…)」

頃合いを見はかり機関砲を放った。

キュンという風の切る音。
鉄を貫く音がティルの耳に届いた。
すれ違うのと同時に敵の機体から煙が出た。
そして、数秒後に炎を噴き出す。

『ブービー、ナイスキルだ!!』

バートレットが叫んだ。

最後の一機はバートレットが堕とした。

≪すべての敵機の撃墜を確認…。≫

サンダーヘッドが重々しく言った。

しかし、息をつく暇もなかった。
ティルたちの戦闘機の警報機がけたたましくなっている。

『警報が解除にならない…引き続き対空警戒を。』

バートレットははっとなって海面を見た。

『ナガセ!敵は下にもいるぞ!!』

バートレットが叫んだ瞬間、不審船からミサイルが飛び出す。
ナガセはミサイルから逃れようと空中を走りまわる。
しかし、ミサイルはしつこくナガセの機体を追う。

「ナガセ!!」

ティルは叫んだ。
しかし、どうすればいいのか分からない。

そのとき、ミサイルとナガセの機体の間にバートレットが滑り込んだ。

爆発音。

バートレットの左翼から煙が上がった。

『隊長!!』

ナガセがバートレットを呼ぶ。
今にも泣きそうなナガセの声にバートレットは笑った。

『なに涙声出してんだ。ちょっくらベイルアウトするだけだ。』

バートレットは優しく言った。

『機体なんざ消耗品。搭乗員が生還すりゃ大勝利だ。おい、ブービー!』
「は、はいっ!!」
『救難ヘリとおれの予備機の整備手配、頼んだぜ…。』
「了解!」

バートレットの射出座席が宙に飛びでて、無事にパラシュートを広げた。


≪警報!警報!!ウォードック全期 至急基地に帰還せよ!!≫

サンダーヘッドが緊迫したように叫ぶ

『今度は何だってんだ!!』
『救助ヘリの到着はまだです!!』

≪救助隊に任せろ!基地で燃料、弾薬を補給して再発進!敵は、宣戦布告した!!≫ 全員が耳を疑った。


ユークとオーシアの戦争が始まった。




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