2010/09/27 19:35   サンド島




<緊急発進だ 急げ!!!

  離陸可能な機体から空中退避!!!!>


サンド島はすでに戦場と化し、

あちこちでは爆音と機関砲の音。

空ではすでに何機かの戦闘機が飛び交っていた。


<空襲警報!敵爆撃機 接近!

  スクランブル発進し迎撃せよ!!>


蜂の巣をつついたように整備士や司令官たちが慌しく動く。

戦闘機に乗ったティルはあっという間に戦場となったサンド島に圧倒されていた。

煙を吐きながら海に落ちる戦闘機。

ぞくりと背筋が凍っていく。


「っここにいれば良い的だ!ウォードック、発進する!!」

『タービンの回転が上がらねぇ。急げ急げ急げ!!』

ティルの前を行くチョッパーの機体がゆっくりと動き出した。

気持ちだけが前へと進んでいく。

なかなかスピードを出さない戦闘機にティルは焦りを感じていた ヒュルル―という風が吹くような音にはっとなり頭上を見上げる。

煙を上げた機体が落ちてくるのが見え、


声を上げる前にチョッパーの機体のすぐ脇に墜落した。

血が音をたてて落ちていくのがわかった。


「っチョッパー!!?無事か!!?」

『きゅ、九死に一生だ、このヤロー!!』


チョッパーの無事な声にティルはほっとする。


<いいか、上がったらできるだけ高度をとるんだ、敵にかぶられるんじゃないぞ>


おやじさんの声が無線から聞こえた。

「わかってる。」


敵の攻撃が止んだ。

第一波が過ぎたようだ、発射するなら今しかない。

ティルは操縦桿を握りなおした。


「ウォードック、発進する!!」


スロットルを一気に前に倒す。














地上は混乱していた。

あちこちで上がる爆音や炎に人々は逃げ惑うように走りまわる。

「っわ!!」

グリムはやっとの思いで外に出て、空を見上げた。

飛び交う戦闘機。

機関砲の音、ミサイルの軌道にのこるわずかな煙。

初めて見る、戦場。


がくがくと足が震えた。

「グリム!!何突っ立ってんだ!?」


消火器をもった顔見知りの整備士が怒声を上げた。

彼の顔や服は煤で真っ黒になっている。


「…無事上がったようだな。」


滑走路では丁度3機の戦闘機が空へと飛んで行った。

確かに、グリムの目には黒い犬の部隊章が入っていた。


「ティルさん。」


「おい!こっちも消火してくれ!」

「了解! グリム、さっさと逃げろ。お前は大事な戦闘機乗りなんだ。」


そう言い残し、整備士は声の方へ走って行った。


ティルの機体は吸い込まれるように敵機に近づき、確実に墜としていった。

あっという間に、2機目に喰らいつき、墜としていく。


「すごい…っ」


思わず声を上げた。


敵機の第二派が東から来るのが見えた。


「おい!機体の燃料を抜け!!」

「消火剤がないぞ!!」


あちこちで罵声に似た声が飛び交う。

対空砲が轟音をたてて弾を空へと撃つ。


グリムはどこへ行けばいいのか分からず、走った。

敵機が頭上を走る。

少しして、背後から爆風が吹いた。

焼けるように熱い爆風に背を押されるように、まだ無事な格納庫へと逃げ込む。


「っ…はぁ、はぁ。」

目の前に立つ、戦闘機と目が合う。

「ラファール-M…。」

外をに睨みつけるように立つラファールは今すぐにでも動きだしそうだった。

グリムは梯子に上がり、コックピットを覗き込む。


燃料は入っている。



遠くで爆音が聞こえた。






「…。」



グリムは意を決して、コックピットにあったフライトヘルメットを被った。