高校なんて、自分の家から近い場所を選んだ。

進学希望場所を自分の家の近くにある倉沢高校の名前を書いて担任に提出したら、
担任は眉をしかめたのを覚えている。
そして、

「お前の頭では無理だ。」

第一声がこれだ。
だからなんだ。そう思った。

まぁ、そう言われるのも無理はないと思う。
俺ははっきりいって勉強が嫌いだ。
成績とか学歴とか興味がない。
そんなので人の評価をつける世の中だどうかしている。

中学の中では下に位置している俺の成績では、この高校は無理だと告げられた。
倉沢高校はちょい上レベルらしい。
高校ぐらい好きに選ばせてほしいものだ。

「落ちるのは当たり前だぞ」
「受けてないのにどうしてそう言えるんですか?」

そう、言い返してみれば、担任は苦虫を噛み潰した様に顔を歪める。

それから何度かの進路調査のたんびに言われ続けていたが、俺は進路を変えなかった。
両親も特に異論はないらしく(放任主義なのだ)最終的に俺は倉沢を受験した。



結果は合格。
担任は驚いていた。ざまあみろ。








「秋、入学おめでとう。」
「いいなー、学ラン。」

入学式から帰ってくると父さんと兄ちゃんが迎えてくれた。
気持ち悪いぐらいニコニコとした表情。

「ほら、早く着替えてらっしゃい。ちゃんとハンガーにかけるのよ高校生。」

母さんは2階へ上がるように俺を急かす。
なんなんだ。

なにかがある…企んでる。
俺は恐る恐る自室へと戻った。

部屋に入って制服である学ランを脱ぐ。
母に言われたとおりちゃんとハンガーにかけた。

ふと、ベッドに目を向ける。
ベッドにでかいものが横たわっていた。
赤いリボンを巻きつけられたそれ。

「あ…。」

その正体がわかった途端、俺は声をあげていた。





どたどたと忙しなく、階段を降りる。
リビングの扉を開ければ3人の目が俺に集中する。

「見た?」
「見た!!」

「いいだろ?」
「いい!!!!」

「本は俺からな。」
「ありがとう!!」

母さん、父さん、兄ちゃんの順に言われ、返す。
俺の反応がよほど面白いのか3人は笑った。





ベッドには、真新しいギターと楽譜。


来週から新しい生活が始まる。







これからの3年間が、俺…俺たちにとって重要なものになるなんて

まだ、誰も知らない。








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