「っというわけで…俺たちもバンドをやるわけだ。」


春哉、夏樹、冬流の3人は秋の家におじゃましていた。


秋の部屋で一冊の開かれたノートとペンを床に置いて、それを囲むように4人は座っていた。

春哉は机のイスに、夏樹と冬流はベッドを背もたれにして、秋はそれに向き合うように座っている。


「秋の部屋、漫画とか本とか多いね。」

「CDもね。」


落ち着きなさそうに3人はあたりを見渡す。

秋の部屋で目につくのは漫画と本、CDが多い。

本棚に入りきらないのか(本棚は2つある)、床や机のあちこちに本やCDが積み重ねられていた。


部屋の隅にはエレキギターとアコースティックギターが身を寄せ合うようにたっている。


「あ、これおもろいよね〜俺ももってる。」


冬流が近くにあった一冊のマンガを手に取り言った。


「冬流っ!!」

「は、はいぃ!!?」


そんな冬流を秋は黙らせる。

目が、本気だ。


冬流は慌てて漫画本をもとあった場所に戻す。


「いいか、俺たちはこれからバンドをやるんだ!!」

「う、うすっ。」

「秋、燃えてんな…。」


普段からは想像できないほどの秋の姿に夏樹と春哉は驚いていた。

今にも立ち上がって演説するのではないかという勢いだ。

そんな秋に圧倒されがちな3人の耳に扉をノックする音。


「秋、これ…。」


入ってきたのは、秋と同じ癖のある黒髪の青年。

大学生ぐらいの年だ。手には盆があり、其れには4つのグラスが乗っている。


「兄ちゃん。」


3人の視線に気がついて、秋は言った。


部屋に入り秋の兄・哲は、盆を4人の中央に置く。


「秋の友達かい?秋が世話になってるね。」

「い、いえ…。」

「何の話してたんだ?」

「バンド組む。」

「へぇ。」


哲は改めて3人を見、嬉しそうににっこりと笑った。


「がんばってね。」

「「「ありがとうございます。」」」








「秋の兄ちゃんて大学生?」

「うん。俺より5つぐらい上。」


ぐらいを付けるのは何とも秋らしい。

秋はすぐに話を元に戻す。


「んで、バンド名は『春夏秋冬』でいいよなっ!!!」


有無をいう暇もなく、秋はノートに『春夏秋冬』と書き込んだ。

異論も聞かず、次へと進む。


「次!楽器決めよう。」

「それなんだけどさー。」


春哉が発言する。


「俺、バンドやったこと無いから何が自分にあってるかわかんないんだよね。」

「確かに…。」


秋も頷いた。


「とりあえず、ギターとベース、ドラムだろ?」

「明日、藤先輩たちに聞きにいかない?」

「あ、それいいかも。」








とりあえず今日は解散となった。



外はすでに月が浮かび始めていた。








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