ただ、虚空を見ていた。
何も考えず。
頭の中は真っ白で
ただただ、虚空を見ているだけ。
自分は何をやっているのだろう。
なにがしたい?
なにを、やりたい?
自分は、抜け殻のようだった。
俺は、死んだんだ。
窓から入るやわらかい風、光、匂。
『…軍は、なおも侵攻を続け―。』
テレビから流れる、キャスターの声。
いまのニュースは馬鹿みたいにベルカ戦争の事しかやらない。
くだらない…。
『ウスティオ臨時政権は、傭兵部隊を集め、ベルカへの反撃を―。』
テレビの画面を見る。
下のほうに連絡先が書かれていた。
ぼんやりと数字の羅列を見つめる。
…。
俺は、電話を取った。
1995/04/02 12:30 ヴァレー空軍基地
「あんたが、サイファーか?」
出撃のために、自機の隣に立っていた所を一人の男が話しかけた。
見たこと無い男だ。
俺を嘗め回すように見る。
「…そうだが、あんたは?」
いい気分じゃないから、逸らすそうに問いかける。
「聞いてないのか?あんたの相棒だよ。」
「それじゃぁ…。」
「そうだ、俺がピクシーだ。」
にやりと笑うピクシーと名乗った男。
以前の戦場で右翼を失いながらも帰還を果たした男だ。
それを誇るかのように自らの機体の右翼には赤くペイントをしている。
一度、空高く飛んでいるのは見たことがある。
腕のいいパイロットだと率直に思った。
そのピクシーが俺と組むことになった。
ガルム隊として、先月の27日からこの戦争に参加した。
前の任務まで組んでいた男は前回の任務で敵機に墜とされた。
腕もよく、気前がいい奴だった。
その埋め合わせとして、俺はピクシーと組むことになっていたのだ。
「時間だ。全員乗れ。」
ヴァレー空軍基地の司令官が言った。
「あとでな。」
そういうとピクシーは俺の肩を叩いた。