1995/04/15 14:35  ヴァレー空軍基地

「あと、数センチずれてたら、お前はあの円卓の餌食になってただろうよ…。」


アルが言った言葉に相棒は興味なさそうに相槌を打った。

一発だけ被弾したらしいサイファーの機体の穴は燃料タンクのすぐ傍を貫通させていたらしい。

アルの言葉どうり、あと数センチの差でこいつは今頃ここにいなかっただろう。


「ったく、運のいい野郎だな。」


「おれ、この機体あんまり好きじゃないんだ。」



突拍子のない科白に俺とアルは舌を巻いた。

不満そうに機体を見るサイファーはまるで駄々をこねる子供だ。


「相棒、一応俺も一緒の機体なんだけどな。」


「そうだな。」


会話が噛み合っていないような気がする。


「イーグルは高い生存性があって安定してる。
 だから、片羽も右翼を失ってでも帰って来れたんだ。」

良い機体だと思うぜ?とアルは付け足す。

サイファーは納得していないようだった。


「…ま、とりあえず穴塞いどくから、安心しろ。」


作業の用意をし始めたアル。

俺も隊舎に戻ろうと踵を返す。


「サイファー、行こうぜ」


一歩も動かなかった相棒に声をかける。

しかし、彼はじっと機体を見ていた。


「サイファー?」


なにしてる?と彼の表情を覗き込んだ。


今まで見たことのない表情だった。




否、奴には表情が欠けている。



笑うことも、なにもかも…顔の筋肉が痺れているのかのように。






初めてみる感情のついた顔。










それは、あえて言うなら…









死を懇願するかのような、

           遺憾なものだった。







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