今日の任務は大成功をおさめた。
特別にと用意されたホット・ウィスキーを洒落込んでいる。
「よぅ、片羽!お前も飲め!」
一人の男がウィスキーの入ったボトルを揺らす。
「いや、後で貰う。それより…」
一度部屋を見渡す。
今日の任務に参加した戦闘機乗りが部屋を埋めていた。
そのなかにあいつの姿はない。
「サイファーは?」
「ああ、あいつならさっき外にでてったのみたぜ」
近くで飲んでいた男がいった。
「そと?」
「あいつ、一匹狼だからなぁ…」
外へ続くドアを引いた。
外は相変わらず雪が音無く降り続いていた。
4月だというのに寒い。
「…さむ」
一杯飲んでくればよかったと後悔したが戻るのが面倒だ。(というか戻ったら二度と出れない気がする)
それに、あいつがいた。
「サイファー」
ジャケットをきてサイファーはただ立っていた。
俺に気付いて振り向く。
「…ピクシー」
「ホット・ウィスキー飲まないのか?」
「後で貰うよ。」
サイファーの隣に立つ。
雪のせいなのかとても静かだ。
「皆とつるむのは嫌いか?」
「?そんなことはないが…」
不思議そうに青色の目が俺に向いた。
「お前が一匹狼ときいたもんでな」
「…いつから俺はそんなふうに思われたんだ?」
「さぁ」
しばらくの沈黙。
寒さに身が震えた。
「戻るか。」
最初に沈黙を破ったのはサイファーだった。
「おい、今日のエースが戻ってきたぜ!」
「おまえらこっちきて飲めよ」
「片羽!俺の獲物奪いやがって!」
「サイファー、お前今日何機墜としたんだ?」
室内に戻った途端罵声やら歓声が飛び交う。
それを軽く流し空いているテーブルに座る。
「おぃ、今日のエース達にウィスキーを用意してくれないのか?」
程なくしてウィスキーがテーブルに置かれ、サイファーが二つのグラスにを注ぐ。
「そういや、ちゃんとした自己紹介まだだったな」
温かいグラスが掌を温める。
かじかんだ手に感覚が戻りはじめた。
「俺は、ラリー・フォルクだ。ベルカ出身。周りには片羽とかよばれてるが好きに呼んでくれ。」
「ユーリ・ローヴェン。ウスティオ出身だ。俺も好きに呼んでもらってかまわない。」
「よろしくな、相棒。」
「こちらこそ。」
互いのグラスを合わせ、一口飲む。
一気に体が温まった。
「一つ、聞いていいか?」
グラスの中身がなくなる頃、サイファーが言った。
黙って、次の言葉を待つ。
「ベルカ出身なのに、なぜウスティオの傭兵に?」
「なぁに、いろいろあるのさ。そういうお前はなぜ戦争に?愛国心か?」
「いや、そんなんじゃない。」
空になった自分のグラスにウィスキーを注ぐ。
いるか?と聞くと黙ってグラスを向ける。
注がれる鼈甲色の液体を見つめるサイファーの表情は昔を思い出しているようだった。
「…死に場所を…。」
ポツリとつぶやかれた声は周りの喧騒に掻き消されそうなほど小さかったが、
はっきりと俺には聞こえた。
「死に場所を求めてるのか…それとも復讐なのか、俺にもよくわからない。」
「…そうか。」
その後、周りの喧騒がなくなるまで俺達はたわいも無い話を続けていた。