1995/04/15 16:00   ヴァレー空軍基地


司令室へと入る。
窓にかけられたブラインドは全て閉められ薄暗い。

「ブリーフィングを始める。」

司令官の言葉と共にスライドに映される地図は、アルロン地方を指していた。
ヴァレー空軍基地からは南西の方角にあるこの地方は豊かな穀倉地帯で、温暖な気候である。

ここには171号線がある。
古い歴史がある171号線は、オーレッド湾の海岸都市とウスティオの首都であるディレクタスを結び、
内陸国であるウスティオにとっては海外諸国との貿易を支える生命線。
ベルカ軍は早くもこの重要性を見抜き、開戦と同時に占拠した。
今回の任務はこの171号線の奪還だ。

「では、18:00に離陸を開始する。」




1995/04/15 18:00  ヴァレー空軍基地


誘導員のハンド・シグナルに従い滑走路の上に機体を置く。
先に出発したピクシーが空へと飛び立った。

俺は管制塔からの指示を待った。


≪ガルム1 直ちに離陸せよ≫

管制塔からの指示。
操縦系統、油圧系、エンジン音を順に確認する。
―問題ない。

ゆっくりとスロットを倒した。
ゆっくりと前進する機体。

上を見上げれば、ピクシーが機体を一回転させた。
ふっと口元が緩む。

十分速度が上がったところで操縦桿を引く。
浮遊感。
この瞬間がたまらない。


だんだんと高度を上げていく。
離れていく地。
近づく空。



≪ガルム1 高度制限を解除する 貴機の幸運を祈る。≫






1995/04/15 18:20 アルロン地方



畑が広がるアルロンに入った。
―そろそろ、か…。


≪こちら、空中管制機イーグルアイ ガルム隊
 攻撃目標は幹線道路沿いに布陣している 作戦を開始せよ≫

『AWACS 上からちゃんと見といてくれよ。』

≪輸送ルートを封鎖 ベルカ地上部隊を叩き潰せ≫

「了解。作戦を開始する。」

スロットルを倒し出力を上げる。
171号線が見えた。

『攻撃対象に民家がある。潰すか?』

下にその民家がいくつか確認できた。

『あの民家はベルカの備蓄倉庫になってるはずだ、どうする?一番機。』
「戦争が終われば、元の持ち主に返される。俺たちがここを奪還すれば問題ないはずだ。」
『了解。』

レーダーに対空車両と戦車が映った。肉眼でも確認できる。
機銃の安全装置を外す。
高度を落とし、地面を舐めるように飛んだ。

『俺は戦車をやる。』

後ろを飛んでいるピクシーが言った。

「わかった、じゃあ俺は対空車両を…。」

射程距離に入ったところで機銃を発砲。
数発、対空車両に命中させれば爆発音とともに吹っ飛んだ。
あっけないものだ。

少し遅れて戦車も同じように吹っ飛ぶ。

『まだまだ、こんなもんじゃないだろ?相棒。』

無線の向こうでピクシーがにやりと笑っている気がした。
その時、機体のすぐ傍を何かが走った。

「気をつけろ、AA GUNがある。」
『そのようだな。』

弾の軌道から見てAA GUNの場所を割り出す。
171号線のすぐ脇、木々の間に隠れているのを発見した。
すぐにそれを機銃で始末する。

レーダーを確認すれば、敵機がこちらに向かっているのが映った。
ピクシーも気がついたようだ。

「散るぞ。俺は下をやる。上は任せた。」
『了解!』

ピクシーは急上昇して敵機を迎え撃った。

俺は下のターゲットに集中する。

SAMやAA GUNに気を配りながら171号線を沿うように飛んでいく。
レーダーに戦車3両が固まってるのが映る。
積んであるGPBに切り替える。

ロックオン。
十分に距離を縮めてGPBを投下する。
すぐに操縦桿を引き、高度を上げる。
下で爆発音。
レーダーを確認すれば戦車3両が消えている。

≪ベルカ地上部隊は残り少ない 作戦を続行せよ≫

「了解 一気に畳み掛ける。」

171号線に沿って北へ目指す。
途中、攻撃を仕掛けてきたSAMやAA GUNを破壊していく。

「ピクシー、そっちは?」
『大丈夫だ。そちらは順調のようだな。』

余裕のあるピクシーの声。
何度か上から爆発音が聞こえてた。
流石と言うべきだ。

『しっかりと仕事を片付けてやろうぜ。』


前方にターゲットが見えてきた。
一度メーターを確認する。

燃料もまだ十分にある。
操縦桿を引いてターゲットたちを見下ろす。
ざっとみて10以上。
周りにはSAMがいくつか配置されているようだ。

一度大きく深呼吸。
シートに座りなおし、操縦桿も握りなおす。

狙いを定め、降下。
ターゲット目指してGPBを投下。

そのとき、ブザーが耳を劈く。

ミサイルか…。

機体をターンさせ、ミサイルをやり過ごす。

「SAMが邪魔だな…。」

SAMに狙いを変更。
兵装もミサイルに切り替え、確実に破壊する。

その間にもいくつかターゲットを破壊していく。
何度か上を往復しているうちにターゲットも残りわずかとなった。

「これで、最後だな。」

最後のターゲット郡にGPBを投下。
ど真ん中に入ったGPBは爆発し、周りのターゲットを飲み込んだ。

「こちらガルム1 イーグルアイ すべてのターゲット破壊。
 171号線の奪還に成功した。」

≪作戦成功だ! これで連合軍の兵力輸送ルートも確保できた。 よくやった、ガルム隊≫

ピクシーがおれの後ろに戻ってくる。
無事のようだ。
キャノピーからは彼が親指を立ててこちらに合図してきた。

≪悪運は今日も味方だったな 『片羽』≫

『翼なしの帰還はもうお断りだ。』


俺たちは基地に向かってスロットルを倒した。






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